現在、日本各地で再生可能エネルギー(再エネ)の導入が進んでいます。
再エネには太陽光、風力、バイオマスなどがあります。これらの再エネでつくられた電気は「再生可能エネルギーの固定価格買取制度」(FIT制度)により、国が定めた一定価格で電気事業者が買い取っています。しかし近年ではそのFITの買取期間・10年が終了した、いわゆる「卒FIT電源」が増えています。「卒FIT電源」は、固定価格で買い取ってもらえないだけで発電そのものは続くのですが、一般的な市場価格では維持費が捻出できないとして発電をやめてしまうケースもあります。こうした電源を有効活用し、地域振興に結びつけようという動きが現在盛んになってきています。これがエネルギーの「地産地消」です。
近い将来実現するかも?
エネルギーの「地産地消」
- 電気
地産地消がもたらす効果
エネルギーを「地産地消」するメリットはどこにあるのでしょう。1つには「産業の育成」が挙げられます。地域の再エネ電源を地域の電力会社が調達し、地域に供給する。その結果、これまで地域外の電力会社に支払っていた電気料金が地域内で循環するため、新たな産業育成と雇用創出につながります。
また、地球温暖化問題が深刻化する昨今、発電時にCO2を生まない再エネには環境価値があります。環境意識の高い企業やユーザーは再エネ由来の電力を通常よりもあえて高い価格で調達し、使用しています。その他にも「ゼロカーボンシティ」を宣言した自治体などは積極的に再エネ由来の電力に切り替えています。このように地域の再エネ需要を掘り起こし販売する、地域密着型の新電力会社が日本各地で増えているのです。その多くは自治体が主体となり、庁舎や学校など公共施設の電力を再エネでまかない、余った電力を一般向けに販売しています。
災害に強い社会を創る
近年では、東日本大震災や大型台風の上陸など、自然災害による停電事故が増えていますが、災害に強い社会を創る際もエネルギーの地産地消は大いに役立ちます。地域の特長をふまえてさまざまな供給源を事前に確保しておき、緊急時には地域専用の供給体制に切り替えることで、地域の暮らしが守れます。たとえば千葉県では2019年の台風15号により多くの市町村で停電が起き、一部地域では1週間以上も続きました。しかし、同県長生郡睦沢町は、国のプロジェクト制度を活用して独自の発電所と自前の送電網および配電制御システムを導入していた結果、地域住民にいち早く電気をお届けできました。このような独自の配電網を持つエネルギー供給システムの実証実験は現在も日本各地で行われています。
電気の新たな流通の仕組み「マイクログリッド」
2022年には、配電事業のライセンス制度がスタートします。申請に対し国が審査し、一定条件を満たしていれば、その企業は電力会社が持つ配電網に自由にアクセスできるようになります。その背景には地域独自のエネルギー供給網の運用を積極的に推し進めようという国の考えがあります。そのため今後は、地域で自立した電力供給システムが多数生まれるとみられます。
このような地域で自立した電力供給システムは「マイクログリッド」と呼ばれます。これは小規模な(マイクロ)電力供給系統(グリッド)という意味です。マイクログリッドを活用することで、遠く離れた発電所から送電する必要がなくなり、設備の維持コストや送電ロスを減らすことができます。また一方で、電気を安定して供給するために、地域単位で多様な電源を確保する必要も出てきます。実現に向けての課題はまだありますが、今後は徐々に各地でマイクログリッドが形成されていくでしょう。
「うちの屋根でつくった電気が、隣近所でも使われる」。そんな時代がすぐそこまで来ています。