2021年7月5日更新 Vol.190

何かと話題の次世代エネルギーについて学ぼう!①水素エネルギー

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2021年6月に開催されたG7(主要7ヵ国首脳会議)の共同宣言にも盛り込まれるなど、脱炭素社会に向けた取り組みは今や世界的な動きとして定着しつつあります。日常生活に必要不可欠なエネルギーを取り巻く環境は大転換の時期を迎えており、CO2を排出しないエネルギーの開発と定着が急がれています。
そこで、本コラムでは新しいエネルギーについて解説していきます!第1回の今回は、次世代エネルギーの本命といわれている「水素」について、最新情報を紹介します。
基礎解説(2019年のvol.109「最近よく聞く名前です。「水素」のココに注目です!」) とあわせてお読みください。

そもそも、水素とは

水素原子は地球上で最も軽く、かつ最も多く存在する原子です。一般的に「水素」と呼ぶのは、水素原子が2つ結合して安定した状態のガス状の水素分子(H2)のことです。水素ガスは無味無臭の気体。燃焼させると、酸素と結びつき水(H2O)になります。「燃やす」というと、言葉のイメージとして、二酸化炭素が発生するのでは?と思う人もいるかもしれませんが、水素ガスには炭素(C)は含まれないので、二酸化炭素(CO2)にはなりません。
ただし、4%以上の濃度になると爆発の可能性が生じます。密閉空間で酸素が加わり、500℃以上になると、その危険性はさらに上昇。そのため気体のまま輸送する際には、タンクの強度や放出量などに細かい規制が定められています。一方、多くのガスと同様に、冷やすことでガスから液体に変換できますが、その液化温度は-253℃と超低温です。現在の課題は大量の水素を安全に輸送するための技術の早急な確立です。

水素を使った発電方法

水素発電の課題は、何よりも発電コストの高さです。発電の原理は火力発電とまったく同じで、水素を燃焼させたエネルギーでタービンを回し電気エネルギーを取り出すというものです。仕組みだけを見れば単純ですが、燃料となる水素が「単体では自然界にほとんど存在しない」という点がネックになります。水素は地球上で最も多く存在する物質ですが、基本的には水や化石燃料や有機化合物など他の原子と結びついて存在しています。このため水素自体を取り出すには水素を含む物質を分解する必要があります。
水素発電を普及させるためにはこういった水素の原料となる素材の調達にくわえ、製造・液化・輸送・保管といったインフラの整備も必要なため、現在の主流な発電方法と比較してコストが高くなってしまうのです。
ただし、コストは環境整備が進めば徐々に低下していきます。現実的なコストに落ちつけば、実用化は一気に進むでしょう。

グリーン水素とブルー水素

ところで、燃料用に製造される水素は大きく「グリーン水素」と「ブルー水素」に分類されます。その特徴は下記のとおりです。
1)グリーン水素・・・水を電気分解することで水素を製造。酸素は大気中に放出(環境への影響なし)。電気分解に使用する電力に再生可能エネルギーを使用することで、CO2を排出しない。
2)ブルー水素・・・天然ガスや石炭などの化石燃料を水素と二酸化炭素に分解し、水素を製造。二酸化炭素は大気中に放出される前に回収することで、グリーン水素と同様にCO2を排出しない。
現状、グリーン水素の製造コストは2015年から2020年の間に40%ほど低下しており、技術の向上などにより今後もさらに低下が見込まれます。日本では再生可能エネルギーの発電量が十分でないため、ブルー水素を強化していく動きがありますが、再生可能エネルギー発電が盛んなEUでは、すでに政策としてグリーン水素の普及が掲げられています。
ちなみに、ブルー水素と同じ製造方法で二酸化炭素を大気中に放出する場合は「グレー水素」と呼ばれます。2020年時点では世界で製造される水素の約95%がこのグレー水素ですが、気候変動への対策にはならないため、今後禁止されていく動きが予想されます。

まとめ

地球温暖化は待ったなしの社会課題です。SDGsの目標12に、「つくる責任 つかう責任」という項目があります。レジ袋の削減や省エネといった「つかう」責任を果たす工夫を一人ひとりがしながら、最新技術の動向に注目していきたいですね。
第2回では「アンモニア」を取り上げます。お楽しみに!(9月頃の更新予定です。)

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