2021年4月5日更新 Vol.181

人の手で光合成も!?
ここまで進んだ二酸化炭素の削減策

  • リサイクル・その他

【2021年版】二酸化炭素(CO2)削減最前線


昨年、本コラムでは温室効果ガスのなかで最も多くの割合を占める二酸化炭素(以下CO2)排出量について、削減策を紹介しました。(【2020年版】地球温暖化を防ぐ二酸化炭素(CO2)削減の最前線)。その後、日本政府は2050年に温室効果ガス排出量を実質的にゼロにする「カーボンニュートラル」を宣言。各種CO2削減対策が急ピッチで検討されています。
そこで今回は【2021年版】CO2削減最前線と題し、現在注目を集めるCO2削減対策について紹介します。

CO2を製品に組み込む

これまでCO2を集めて海底などに貯留するCCS(Carbon dioxide Capture and Storage)(2050年温暖化ガス排出「実質ゼロ」ってどういうこと?)などについて紹介してきました。
現在、排出したCO2を製品に組み込む動きが広がっています。たとえばセメント製造業では、石灰石からセメントを焼成する際、どうしてもCO2が発生してしまいます。そこでメーカーでは研究機関などと連携しながら、発生したCO2を廃セメントと一緒に加工し、建築資材にリサイクルするなどの技術を研究しています。こうした技術の一部は実現しているものもあります。

人工的な光合成再現に成功

化学メーカーなどでもCO2削減に向けた研究が盛んです。現在注目を集める技術が「人工光合成」です。
光合成は植物が太陽エネルギーとCO2、水を元に酸素を出しながら有機物(でんぷん)を形成し、成長する一連の働きです。一方の人工光合成は、CO2と水を原材料に、太陽エネルギーを活用し化学品を合成すること。植物は使いません。
現在有力なのはプラスチックの原料「オレフィン」を人工的に合成する技術です。まず、太陽光エネルギーに反応して水を酸素と水素に分解する「光触媒」を用いて、水を分解。さらに「分離膜」を用いて水素だけを取り出し、その水素にCO2をあわせて化学合成を促す「合成触媒」を使用すると有機物であるオレフィンが生成されます。
この技術は産官学連携で研究が進んでおり、すでに技術は確立され、現在は実用化に向けて変換効率を高める研究が進んでいます。
参考:資源エネルギー庁太陽とCO2で化学品をつくる「人工光合成」、今どこまで進んでる?

温暖化対策は面倒なこと、ではない

ビジネスの世界では積極的な温暖化対策は、産業構造や経済社会の変革をもたらし、大きな成長につながる動きとして認識されつつあります。「面倒な対応」ではなく「次の時代の主流を担う」という発想の転換が求められており、言い換えれば、2050年カーボンニュートラルへの挑戦は、日本社会が経済活動と環境保護を両立させることで、世界の環境問題について道筋を示す大きなチャンスとも言えます。
今後の新たな取り組みが期待されます。

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