2019年4月5日更新 Vol.109

最近よく聞く名前です
「水素」のココに注目です!

  • 電気

注目を集めるエネルギー・水素

地球温暖化を止めるためには、化石燃料の消費を減らし、温暖化ガスの排出を抑える必要があります。しかし、これまでの人間社会では化石燃料を燃やし、そのエネルギーで電気などを作り出す方法がもっとも効率がよかったため、便利で豊かな生活を続けていると温暖化が進んでしまうという悪循環がありました。
現在、太陽光や風力といった再生エネルギーによる発電が急速に普及しているのは、発電時に温暖化ガスが発生しないためです。そうした次世代エネルギーとして近年注目されているのが水素です。

身近にたくさんある水素

水素は宇宙でもっとも多く存在する元素で、資源が豊富です。中学校の理科で水素を燃やす実験をした方は、そのときのことを思い出していください。マグネシウムなどの金属が塩酸などと反応すると水素が生じます。水素は軽いため試験管を逆さにしてその中に入れることが多く、マッチの火を近づけるとポンッと音を立てて水素が酸素と反応して燃え、水ができます。水素をエネルギーとして活用する場合、このように酸素との燃焼で生じるパワーを利用します。

水素発電のメリット・デメリット

水素を活用するメリットは「燃焼時にCO2や有毒ガスが一切出ない」「資源が豊富」「持ち運びが可能」などです。
一方、水素を活用するデメリットは「化石燃料に比べ、つくるコストが高い」「供給インフラが整備されていない」などです。こうしたデメリットは、水素が自然界に単体で存在していないことに起因しています。水素は石油や天然ガスを分解する過程で取り出すか、電気で水を分解してつくる必要があります。その際、昼間の太陽光発電でつくったクリーンな電気で水素をつくれば、大気中のCO2を増やすことなく太陽のエネルギーを水素のエネルギーへ転換・蓄積が図れます。
これまでのエネルギー源は化石燃料が主体だったため、水素活用に向けた環境整備はまだ発展途上です。裏を返せば、研究によって技術開発が進めば、水素の利用コストは大幅に下がる可能性があります。

水素が地球の将来を変えるかも?

日本政府は2017年に水素基本戦略を定め、従来エネルギー(ガソリンやLNGなど)と同等程度の水素製造コストの実現を掲げています。2020年実施の東京オリンピック・パラリンピックでは日本の進んだ水素技術を世界に見てもらう見本市と位置づけ、水素を原料とする燃料電池自動車による選手輸送や選手村の電気を水素でつくるといった取り組みが始まっています。
水素を低コストで社会インフラとして活用する技術が確立できれば、世界のエネルギー事情の改善につながる可能性もあります。水素活用の今後に注目です。