2022年1月5日更新 Vol.208

何かと話題の次世代エネルギーについて学ぼう!④波力発電

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次世代エネルギーについて紹介する本シリーズ。第4回となる今回は「波力発電」について紹介します。前回ご紹介した「洋上風力発電」の動力源である風と同じように、枯渇する心配のない資源として波の力を利用して発電する手法です。実は特定分野では50年ほど前から活用されていましたが、近年、新しい発電方法や発電機が開発されたり実用化へ向けた試験運用が行われたりと、注目が集まっています。
「太陽光発電」や「風力発電」と比べると耳慣れない言葉かもしれませんが、秘める可能性は無限大!発電の仕組みや今後の展望についてまとめます。

そもそも、波力発電とは

数ある再生可能エネルギーの発電方法のなかでも、発電効率がもっとも高い(約80%)とされる水力発電。波力発電はその一種です。海上や海岸に設置して、波の上下や押し波・引き波の運動エネルギーを利用して発電します。発電方法としてはまだ開発途上ですが、天候に左右されにくいため安定した発電を見込めるのが最大のメリットといえます。
発電の仕組みとして代表的なものは、①振動水柱型、②可動物体型、③越波型の3種類です。


①振動水柱型
装置内部に空気室とタービンを設け、波による海面の上下運動で押し出された空気が風となってタービンを回転させ発電する方法です。タービンに海水が触れることがなく、構造もシンプルなため、故障や腐食に強い のが特色。出力が小さいため用途も限定されますが、1965年に実用化された「増田式航路標識ブイ」はこの発電方法を用いており、世界で初めて実用化された波力発電装置として現在もなお国内外で広く普及しています。
②可動物体型
受圧板と呼ばれる板が波を受け、振り子運動を行うことで発生する運動エネルギーを用いて油圧発生装置を動かし、油圧モーターを回転させ発電します。防波堤や離岸堤などの沿岸に設置する実証実験なども行われており、環境負荷や景観へのマイナス影響が小さい発電方法として注目されています。
③越波型
あらかじめ沿岸に貯留池を築いておき、防波堤を越えてきた波を貯めます。そうすると貯留池と海面に高低差が生まれるため、その差をなくそうと海水が移動する際の水流エネルギーでタービンを回転させ発電します。仕組みとしては一般的な水力発電と同様です。防波堤とセットであるため防災にも役立ちますが、防波堤を越えるほどの波が来ないと発電できない点がデメリットです。

普及へのハードルは?

新しいエネルギーの普及にはコストの問題が立ちはだかりますが、なかでも波力発電においては、設備の部品などが量産できないという点が最難関。弱い波でも効率よく発電し続けられる設備と、台風のような高い波が発生する際に最大出力を得やすい設備では、運動制御やメンテナンス、送電などの条件がすべて異なるためです。当然、それらは立地によっても異なりますので、それぞれカスタマイズが必要となりますが、反対に量産品で波力発電設備を築こうとすると、適地が限られるということになります。これは事業化にあたって大変悩ましい問題です。


また、前回ご紹介した洋上風力発電と同様、海域利用ルールなどの整備も必要です。特に波力発電は海流が活発な場所ほど発電効率が期待されますが、そういった場所はたくさんの漁船が活動する海域でもあります。発電所を建設する場合には、漁業との共存についても議論しなければなりません。

まとめ

海に囲まれた日本にとって、波は限りない資源です。洋上風力発電や波力発電のほかにも、潮流発電、海洋温度差発電、潮汐力発電、海洋濃度差発電…といった海洋エネルギーを活用する研究が進められています。「温度」や「塩分濃度」の差までエネルギーにしようとは、まさに次世代の取り組み!夢が広がりますね。
第5回(最終回)では「地熱発電」を取り上げます。お楽しみに!(2022年3月頃の更新予定です。)


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