地球温暖化が叫ばれるようになった当初から、原因のひとつとして必ずあげられていた「森林面積の減少」という問題。人口の増加や社会活動の拡大のために野山が切り拓かれた結果、森林が減少し、CO2の吸収量も減少しているというのは、今や一般的な概念となっています。失われた自然環境を取り戻すのは並大抵の努力では難しいものの、温暖化を食い止めるため、世界各地でさまざまな取り組みが行われていますね。
「植樹」により緑を取り戻そうとするプロジェクトもそのひとつ。「宮脇方式」という植樹方法が、単純に木を植えるよりも効率的であるとして国内外に広がりを見せています。森林の増やし方や、増えたことによる波及効果をみていきましょう。
森林の減少に歯止めをかけろ!宮脇方式という植樹方法
- リサイクル・その他
コツは「その土地の植物を」「密に」「何種類も混ぜて」植えること!
宮脇方式は、植物学者の宮脇昭氏が考案した植樹方法。その土地本来の植生を活かし、間隔を詰めて何種類もの植物を植えることで、荒廃した土地であっても短期間に森林を再生させることができる、というものです。宮脇氏はこの方法で1970年代から植樹活動を行い、国内外の各地で1,700以上の森をつくってきました。
密集させて植えるとなると、陽が当たらず成長を妨げるのでは、と考えてしまいますが、むしろ植物同士の生存競争により、間隔を空けて植樹するよりも成長速度が速くなるといわれています。ある調査では、通常の植樹に比べて10倍の速さで成長したという報告もあるほどです。密集して植えることがデメリットにならないため、都市部や道路沿いのわずかなスペースでも豊かな緑に成長させることができるのです。
また、たくさんの種類を一緒に植えることで、CO2吸収量を高める効果も期待されます。自然の森林は単一の種類の植物でできた植林地に比べて40倍のCO2を吸収するという研究結果があります。人口の森林であっても、宮脇方式ならそれに近づけることができる、ということです。
森林が増えることによるメリット
CO2の吸収量が増加することはもちろんですが、それ以外にも「生物多様性」への寄与も期待されます。宮脇方式ではその土地に元々生えていた植物をベースに、たくさんの種類を植えることで、今まで森がなかった場所にも人工の森林をつくることができます。その土地の植物が増えれば、その土地に生きる動物が暮らす環境を元に戻すことにもつながります。道路や建造物で寸断されてしまった野生動物の通り道にもなるかもしれません。また、森に虫が増えれば、渡り鳥のエサとなるなど、環境破壊で変わってしまった生態系を少しでも以前のかたちに戻すことができるかもしれません。
その他にも、森林は地中に水資源を蓄え、洪水・強風・火災などの被害を軽減するといった役割を果たします。普段の暮らしの中でも、街中にちょっとした森林があったら、木陰や小鳥のさえずりでほっとひと息つけそうですね。
広がりはヨーロッパやアジアにも
宮脇氏は残念ながら、2021年7月に逝去されました。しかし、宮脇方式に魅力を感じた世界中の人々の手で、この植樹方法による小さな森林は増え続けています。オランダでは支援保護団体が主体となって宮脇方式の森林を100ヵ所以上つくり、その他の国々でも同様の取り組みを行っています。フランスやベルギー、イギリスでも森林が次々と誕生しています。アジア地域ではインドやパキスタンの都市部でも、日本企業の現地工場で宮脇方式を知った方が起こした企業による植樹計画が進行中だということです。
日本発の植樹方法で世界中の町が緑であふれたら素敵ですね!宮脇方式に限らず、植樹は個人で実践するのは難しいですが、日本国内でも自治体や自然保護団体、ボランティア団体、企業などで取り組んでいるケースが多くあります。参加してみたい方はぜひ、お近くのイベント情報を調べてみてください。