2021年6月5日更新 Vol.187

地球温暖化の影響で
農業・漁業が大きく変わる

  • リサイクル・その他

平均気温が3度上がると…


地球温暖化がもたらすさまざまな影響のなかでも、生活に直結する食への影響が懸念されます。農林水産省が2007年に発表した研究開発レポートでは2060年代に平均気温が3度上昇した場合、どのようなことが起きるかが書かれています。
・水稲収量は、北海道では増加し、東北以南では減少する
・リンゴの栽培適地は、徐々に北上し、北海道はほぼ全域が適地になる一方、関東以南はほぼ範囲外となる
・温州みかんの栽培適地は、現在の西南暖地沿岸域から南東北の沿岸部まで拡大する

かなり衝撃的な内容です。
ちなみに、稲は温暖化により高温が続くと、成熟が阻害され、白未熟粒が発生することが知られていますが、既に白未熟粒の発生は増加傾向にあります。

桜の開花、かえでの紅葉にも変化が

実際の自然現象も温暖化の影響は大きいとみられています。気象庁がさくらの開花日とかえでの紅葉日の30年間の平均を比べたところ、さくらの開花日は10年あたり1.0日の変化率で早くなっており、かえでの紅葉日は10年あたり2.8日の変化率で遅くなっているそうです。
このように温暖化が進むなかで、漁業の姿も変わってきています。たとえばブリやイナダは1990年代前半までは主に本州の日本海・太平洋沿岸に分布し、北海道ではあまり見られませんでしたが、海水温の上昇とともに北海道での漁獲が増えています。また、サンマの漁場は現在、北海道東部の根室沖ですが、このままのペースで海水温が上昇すると、100 年後の日本近海ではほとんど獲れなくなるといわれています。

実際のところ気温は上昇している?

日本の気温は年々少しずつ上昇しています。
気象庁が発表している「日本の気候変動2020」によれば日本の平均気温はこの100年間で1.24度の割合で上昇しているとのことです。また、天気予報で「平年並み」という判断のもととなる気象庁の平年値が2021年に10年ぶりに更新されたのですが、各地で大幅に上がりました。
また、2019年の平均気温は統計開始以降最も高くなりました。IPCC(気候変動に関する政府間パネル)の第5次報告書によれば、世界が今後何ら対策を講じず、このまま温暖化が進行した場合、21世紀末には最大で4.8度上昇するケースが想定されています。先述のレポートは2060年代に平均気温が3度上昇した場合を想定していましたが、こうした想定も十分ありえるといえそうです。

適応策だけでは解決不可能

地球温暖化対策は温室効果ガス排出の抑制を図る「緩和」と、起こりうる自然の変化を予測し、自然や人間社会のあり方を調整する「適応」の2つがあります。
たとえば、稲の場合、現在は高温でも白未熟粒が発生しにくいような品種改良が進んでいます。また、温州みかんは、成熟期の高温が原因で、果実と皮が分離する「浮き皮」が発生します。そのため現在は浮き皮の発生しにくい品種改良が進んでいます。
さらに、温暖化が進むと大雨・洪水の発生率が高まると考えられており、河川の治水などは災害の大型化を視野に入れた対策が取られています。
しかし、これらの適応対策はいずれも根本的な問題解決には程遠いのが実情です。
本サイトに掲載のこれまでのコラムなども参考にしていただき、日常生活の中でできることから始めていきましょう!

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